- 金融機関が被相続人名義の預金の引き出しに応じてくれない場合
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金融機関によっては、亡くなられた被相続人の名義の預金残高が少ない場合、相続人が金融機関の窓口に行けば、預金の引き出しに応じてくれることもあるようです。
しかし、多くの金融機関は、後日、相続人間のトラブルに巻き込まれるおそれがあることから、相続人全員の署名押印のある遺産分割協議書又は相続人1名を払戻人の代表者とする内容で相続人全員が捺印した同意書と各自の印鑑証明書の提出がなければ、払戻しに応じてくれません。
もっとも、遺産分割に争いがある場合、このような書類を整えることは無理なので、裁判所に遺産分割調停を申し立てるか、または、その金融機関に対し、法定相続分の預金の払い戻しを求める訴訟を提起するしか方法はありません。、
平成26年、大阪高裁で、相続人が法定相続分の払い戻しを求めたところ、他の相続人の同意がないことを理由に払い戻しを拒否した金融機関に不法行為責任を認め、弁護士費用相当額の損害の支払いを命じた判決がありました。そこで、訴訟を提起しなくても、徐々に払い戻しに応じる金融機関は増えていくでしょうが、しばらくは、訴訟提起せざるを得ないでしょう。
ところが、最高裁は平成28年12月19日、共同相続された普通預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるものではない、とし、平成29年4月6日、定期預金債権、定期積金債権についても、同様としました。その結果、訴訟提起しても、敗訴するため、遺産分割調停を申立てなければならなくなりました。